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生産者紹介

vol.8 「きくらげ」の生産者を訪ねて

農産物:きくらげ
生産者:株式会社いとおさんち

【プロフィール】
美山地区できくらげの菌床栽培に取り組む農地所有適格法人。社名は、代表・伊藤豊さんの苗字と、「いとおしい産地にしたい」という思いに由来している。今回は、栽培担当の小越健太郎さんにお話を伺う。牛や豚、鳥などの畜産、稲作を経て、2021年にきくらげ農家として就農した農業のエキスパートだ。

肉厚でコリコリ。弥彦村のブランドきくらげ「越のうさぎ」

「越のうさぎ」は、弥彦村が誇るブランドきくらげです。とにかくサイズが大きく、肉厚。食べごたえのあるコリコリ食感がたまりません。いとおさんちでは、施設で合計約2200個の菌床で栽培。地元の直売所やスーパーでは、毎朝飛ぶように売れる人気ぶりです。

「直売所で棚に並べていると、『美味しかったからまた来ました』と言って買ってくださる常連客がたくさんいます。きくらげは、食物繊維やカルシウムがとっても豊富。しかも低カロリーです。私もきのこの中では一番好きかもしれません」

そう笑顔で語る小越さんは、酪農から水稲の農家を経て2021年、いとおさんちが設立すると同時に入社。きくらげ栽培をスタートしました。

「きくらげは国内自給率が5%ほど。県内の生産者もそこまで多くなくて、弥彦にいたってはゼロでした。だから今までの農業の経験を活かして挑戦してみたかったんですよね。ところが、いざ始めてみたら、とても難しかったんです!菌を扱う栽培は、今まで経験してきた農業の中でも異なる難しさがあると思います

室温と水の徹底管理。狙うは、ストライクゾーン

一般的にきのこは20度以下の涼しい環境を好みますが、きくらげ栽培は暖かい場所が適しているとか。いとおさんちでは、「地熱」を利用した栽培に取り組んでいます。きくらげの地熱栽培は全国的に見てもめずらしいそうですよ。

「新潟は寒いですから、地熱を利用すれば施設内が温まるんです。きくらげは、ほかのきのこのように20度以下の環境だと、生育が止まってしまいます。23度くらいがベストですね。この微調整が難しい」

室温の調整が上手くいかないと、肉厚に育ちません。特に小越さんが苦労したのは、水の管理だとか。水やりはスプリンクラーで行いますが、その量の調整は、温度管理以上に神経を使うそうです。

「湿気を好むので、基本的に水の量は多い方が良いです。乾燥してしまうと、みずみずしさが無くなっちゃうので。とはいえ、水を与えすぎてもいけません。特有のコリコリ食感が失われてしまうんです。扱いが難しい作物ですよねぇ(笑)」

と、苦笑いの小越さん。季節によって変わる湿度も大いに影響を受けます。たとえば、湿気が多い夏は、水の量を控えるそうです。

「施設栽培とはいえ、換気のために窓を開けないといけません。そうすると湿気を含んだ外気が入ってきますよね。冬になると、今度は乾燥との闘い!とにかく水をたっぷり与えます。どんな季節であろうと、大ぶり・肉厚・コリコリ食感に育てられるように、室温と水の量のちょうど良いバランスを狙います。これを我々は『ストライクゾーン』と呼んでいますね(笑)」

年間を通して一定の品質を保つカギは、ストライクゾーンを狙えるかどうかにかかっています。

「弥彦山がもたらす風」が、健康に育つ秘訣

新潟は、夏と冬の気温差が大きく、雨が多い地域。それだけに、室温・湿度ともに繊細な作業が求められます。しかし、弥彦村の自然豊かな環境に助けられている一面もあるとか。

「風に恵まれています。弥彦山から吹き降りてくる風は、きくらげを健康に育ててくれるんですよ。稲作もそうですが、適度に吹く風は虫除けにもなりますしね。弥彦の風は強くもなく、弱くもなく、ちょうど良いんです」

じつは、いとおさんちは、農薬のみならず虫除け剤も使っていません。だからこそ、弥彦山がもたらす風の恩恵は大きいと言います。

「子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで安心して食べてほしいですから。収穫後の水洗いも手作業ですし、石づきも丁寧に一つ一つ取り除きますよ。手間ですけど、美味しく食べてもらうためにはやめられませんね(笑)」

幅広い料理で活躍する万能食材

きくらげは、一般的に油を使った料理と相性が良く、吸収する栄養価もアップすると言われています。クセが少ないため、幅広い料理で活躍してくれる万能食材。小越さんはどんな食べ方で楽しんでいるのでしょうか。

「私は『きくらげ大好き人間』なので、季節によって楽しみ方を変えていますよ。春はたけのこご飯、秋は栗ご飯の具材として入れるのがおすすめです。油と相性が良いのでアヒージョにするのも美味しいですよ」

中でも一番好きだと語るのは……。

「きくらげをさっと湯がいて、溶かしたバターと醤油をかける食べ方。シンプルですが、めちゃくちゃ美味しいです!晩御飯の一品はもちろん、お酒のお供にも最高なんですよ。ぜひ試してみてください!」

 

「弥彦村といえばきくらげ!」ブランド認知を高めたい

肉厚で大ぶり、コリコリ食感が魅力の「越のうさぎ」。いとおさんちは、ブランド認知の拡大に努めています。

「そこで、少しでも多くの人に越のうさぎを知ってもらおうと思って、神社前で『おでん』にして販売してもらっています」

弥彦神社前に並ぶ土産物店の一つ「杉山」。こんにゃくや大根といった定番具材と一緒に、串刺しにした「きくらげのおでん」も楽しめます。芳醇なつゆが染み込んで絶品。ぷりぷり食感を堪能できるとあって、きくらげ好きの観光客に好評だとか。

「きくらげを生産しているのは、まだ弊社の1件だけです。つくり手がもっと増えてくれたら嬉しいですね」

そんな「いとおさんち」に、2025年、新しい社員が仲間入りしました。小越さんたちのめずらしい取り組みを見て、自身も挑戦してみたくなったそうですよ。

「みんなできくらげ栽培を盛り上げていきますよ。いつかは、『弥彦村といえばきくらげ!』と言ってもらえるような存在になれば良いですね(笑)」

 

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