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生産者紹介

「弥彦むすめ」の生産者を訪ねる

農産物:「弥彦むすめ」(枝付きえだまめ)
生産者:吉野彰さん

【プロフィール】
弥彦村野菜部会の部会長を務める。大学卒業後、農業の面白さを実感したことで専業農家になることを決意。祖父の代から続けてきた枝豆をはじめ、米やブロッコリーなどを栽培している。弥彦村が全国に誇る特産品「弥彦むすめ」の生産をけん引する農家のひとり。枝豆は好きだが、ビールのお供はピーナッツ派。

 

弥彦村が全国に誇る、ブランド枝豆「弥彦むすめ」

弥彦むすめは、枝付き・根付き・葉付きにこだわった、全国でもめずらしい枝豆です。畑から収穫した枝豆を、きれいに束ねておめかしさせて出荷します。生産者の「大切に育てた娘を嫁に出すような気持ち」から、「弥彦むすめ」と名付けられました。

「根っこまで付いている枝豆なんて、都会の人はなかなか見ることないでしょう?これは、より新鮮で美味しい枝豆を届けるための工夫なんですよ。収穫したままの姿で出荷することで、より鮮度が保たれます。やっぱり新鮮な枝豆の美味しさは、一味も二味も違いますね。弥彦むすめは、早出しの品種なんです。実入りが七分〜八分で収穫するので、歯ざわりがとても良いんですよ。香りはあっさりとしていてさわやか。ほかの枝豆にはない独特な香りで、僕は好きですね〜。」

 

「いち早く枝豆を届けたい」という生産者の思い

弥彦村で弥彦むすめの栽培がはじまったのは、1968(昭和43)年。当時から、新潟県でいち早く食べられる極早生品種の枝豆として販売してきました。そんな弥彦むすめの収穫シーズンは、暑さを感じるようになる5月上旬からはじまります。

「早生品種の枝豆のなかでも、特に収穫時期が早いので、温度管理がとても大変。生産者の技術が上がったり、寒さ対策のできる資材が出てきたりして、昔に比べて1ヶ月ほど収穫時期が早くなっていますね。そこには、『美味しい枝豆をいち早くお客さんへ届けたい』という生産者の思いもあったんだろうなあ。」

弥彦むすめは、まだ雪の残る2月〜3月に定植。寒さ対策のため、ビニールを張ったハウスやトンネルの中で栽培されます。

「5月上旬まで、朝にトンネルのビニールを開けて、夕方に閉めるという作業を欠かさずやります。この作業を忘れてしまうと、実入りが悪くなってしまうんです。暑すぎても、寒すぎても、ダメなんですよね〜。今年ね、うっかりビニールを閉め忘れた所があるんです。今まで枝豆を作ってきて初めてですね。どんな仕上がりになるのか、比較するのがちょっと楽しみです。」

 

自分の娘のように大切に育てた「箱入り娘」

「温度管理以外でいうと、追肥のタイミングも大切ですね。その日の天気や気温を見ながら、追肥する日を調整しています。タイミングによっては、樹が伸びなくなったり、逆に大きくなりすぎたり、難しいんですよ。あと、追肥の作業中はビニールを全開にするので、なるべく暖かい日にしています。やっぱり、寒くなるといけないので。」

まさに、自分の娘を思うように大切に育てている吉野さん。ときに振り回されながらも、愛情をたっぷり注いでいます。

「暑いと言ったり、寒いと言ったり、本当に手間がかかるんです。本当に自分の娘だったら、嫁に行けるか心配になるくらい、あまやかして育ててますね。箱入り娘ですよ(笑)。」

 

きれいな姿でお客さんに届くよう、心を込めて送り出す

弥彦むすめの生産農家は、味はもちろん見た目にも気を使っています。機械を入れてキズが付いてしまわないよう、収穫や結束はすべて手作業です。

「枝豆の収穫は、機械化している農家がほとんどだと思います。ですが、枝付き・根付き・葉付きにこだわる弥彦むすめは、そうはいきません。トンネルの中にかがんで、一本ずつ引っこ抜いて、余計な葉っぱを取って……。話しているだけでも気が遠くなってきました(笑)。さらに、その後の結束作業も大変。莢の数・莢の厚さ・葉の数など、厳密な決まりがあるんですよ。きれいな姿で嫁に出してあげるために、一本一本バランスを見ながら丁寧に束ねていきます。」

 

自信があるからこそ、もっと多くの人に味を知ってもらいたい

「弥彦むすめって、どうしても茶豆と比較されるんですよね。『ただ早いだけの枝豆』と言われることもありますが、『弥彦むすめ』というブランドはだんだんと認知されてきていると感じています。今後は、実際に食べてもらって、味を知ってもらう活動にも、力を入れていきたいですね。学校給食に提供したり、試食イベントを開催したり、夢が広がります。」

「ビールのおつまみ」というイメージが強い枝豆。しかし、吉野さんの思い描くターゲット層は、大人ではなく子どもだと言います。

「ちょっと変わった枝豆だからこそ、子どもに食べてもらいたいんです。なかなかこんな姿の枝豆を見る機会もないと思うので、『枝豆ってこんな風に実るんだ』という新しい発見にもつながります。枝から莢をもぎ取って食べるという体験まで楽しんでほしいです。そして、子どもの頃に食べた味を忘れず、大人になったら自分で買ってもらいたいですね。」