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生産者紹介

vol.2 「伊彌彦米 零」の生産者を訪ねて

■農産物:「伊彌彦米 零(いやひこまい ぜろ)」
■生産者:菅沼秀一さん
■プロフィール:
井田地区で代々続く米農家に生まれる。大学卒業後、青果市場に6年ほど勤めたのち、家業を継ぐ形で就農。現在は、弥彦村のブランド米「伊彌彦米」の中でも特に厳しい栽培基準の「伊彌彦米 零」を生産。2023年から農協の役員(経営管理委員)を務め、地域農業の発展にも貢献している。好きなご飯のお供は、新潟の郷土料理「煮菜(にな)」。

 

2016年に誕生した、弥彦村のブランド米「伊彌彦米」

古くから稲作をしていた記録が残っている弥彦村。一説では、彌彦神社の御祭神「おやひこ様」が、新潟県内に稲作を広めたと言われています。2016年に誕生した「伊彌彦米」は、そんな神様の名を冠した弥彦村のブランド米です。

「『伊彌彦米』って、なんともありがたそうな名前ですよね。自分たちが当たり前に作っていた米がブランド化されたことで、モチベーションが上がった農家も多いと思います。」

「伊彌彦米」の条件は、農薬・化学肥料の使用量を慣行栽培の5割以下に抑えた「特別栽培米コシヒカリ」であること。農家さんたちが手間ひまかけて育てたお米です。

 

「農薬・化学肥料を抑えた米づくり」に取り組んできた弥彦村

「弥彦村は、昔から『農薬や化学肥料を抑えた米づくり』に力を入れている地域なんです。役場や農協がイニシアチブを取り、弥彦村の米を好んで買ってくれるお客さんのニーズに応えようとしたことがきっかけですね。おそらく、平成初期には多くの農家が取り組んでいたと思います。地域全体で取り組むのは、当時めずらしかったんじゃないですかね〜。」

菅沼さんが育てているのは、伊彌彦米の中でも特に厳しい栽培基準をクリアした「伊彌彦米 零」。こちらは、農薬・化学肥料を使用せずに育てたお米です。

「お客さんからは、『香りが豊かで甘みがあって美味しい』と言ってもらうことが多いですね〜。おそらく、化学肥料の代わりに使用している有機質肥料のおかげだと思います。即効性のある化学肥料に対して、ゆっくりじわじわと効いていくのが有機質肥料なんですよ。効き目が目に見えて分かりにくいから、どのタイミングでどのくらい肥料をあげるのか判断が難しい。難しいからこそ、やりがいはありますよ!」

 

稲刈り作業は、一年間の答え合わせができる瞬間

「伊彌彦米 零は、農薬を使用しない分、除草作業はけっこう大変です。前は、田んぼに黒い紙を敷いて雑草が生えないようにする『紙マルチ』をしていたんです。ただ、弥彦は風が強い地域なので、紙マルチが風に煽られて動いてしまうんですよ。どうしようかと思っていた時に、ちょうど村で除草機を導入することになりました。地元の農家が共同で使っています。」

田植え後は、稲の生育状況や天候を見ながら除草機で除草作業を行います。この時期にいかに雑草を抑えられるかが勝負です。

「追肥や除草など、重要な作業はたくさんありますが、一番好きなのは稲刈りですね。一年間ずっとテストを受けてきて、その答え合わせができる作業なので!近ごろ、夏場の気温が異常に高いじゃないですか。米の品質が悪かったり、収量が少なかったり、米づくりにも大きな影響が出ています。2023年は高温渇水で、ほとんどの米の品質が落ちてしまったんですが、伊彌彦米 零の品質は良かったんですよ。気候変動にも負けないように管理をしているので、その結果が出ると嬉しいですね〜。」

 

手をかければかけるほど、美味しいお米に仕上がる

菅沼さんが米づくりを行うのは、村の中心部に位置する井田地区。東側に弥彦山、西側に井田丘陵を望む、農業が盛んなエリアです。

「昔は、この辺一帯が潟(かた)だったんですよ。ここの田んぼは、戦前にそこの井田丘陵を削って、小舟に乗せて運んで、潟を埋め立てて作ったそうです。」

代々受け継ぐ田んぼでの米づくりのほか、枝豆などの園芸品の栽培もしてきた菅沼さん。しかし、2024年に枝豆の栽培をやめて、米づくりに注力することを決意。経営や労力の要因が大きいとのことですが、ほかにも理由があるそうです。

「米と枝豆をやっていると、どうしても作業の時期が被ってきて、意識があっちに行ったりこっちに行ったりします。枝豆の合間に米をやるのではなく、一点集中型のほうが性に合っているんです。米って、園芸の片手間でできる簡単な作物だと思われがち。ほっといてもそれなりに収穫はできますが、手をかければかけるほど、その仕上がりは変わってきます。そこが面白いんですよね。」

 

弥彦村の農家はみんなまじめ。自然と良いものを追求する

「就農してすぐの頃は、雨が降った日は家でのんびり本でも読んでりゃ良いかと思ってましたけど、とてもそんな暇はないですね。やることはいっぱいあるし、作業してないと落ち着かない。手を動かしている方が安心するんですよ。今では、田んぼに行くことが息抜きだったりします。」

米づくりに真摯に向き合う菅沼さん。これは弥彦村の農家の特徴でもあるそうです。

「不思議なもんで、どんなに美味しい米ができても、『これで完成!』とはならない。もっと良くなるんじゃないかと思ってしまうので、終わりがないんですよ。そういう意味では、弥彦村の農家はみんなまじめですね。だから、誰かが何か言わなくても、勝手に品質の良いものを目指します。たぶん『俺のとこの米が一番』ってみんな思ってるんじゃないかな。」

弥彦村の農家が自信を持ってお届けする伊彌彦米。せっかくなら、炊き方にもこだわりたいですよね。菅沼家のお米の炊き方を教えていただきました。

「うちでは昔からガス釜で米を炊いています。少し前にガス釜が壊れて、電気釜で炊いていたことがあるんですが、味がまったく違うんですよ。『やっぱりガス火じゃなきゃ!』と、ガス釜を再度購入しました(笑)。ぜひ試してみてほしいです。」