
農産物:小麦(ゆきちから)・大豆
生産者:農事組合法人サンファーム大戸・農事組合法人第四生産組合・農事組合法人アグリさくら
【プロフィール】
小麦・大豆の代表メンバーは、農事組合法人アグリさくらの深澤克海(左)、農事組合法人第四生産組合の渡辺慎也(中央)、農事組合法人サンファーム大戸の諸橋佑一(左)。

小麦畑

大豆畑
弥彦村に小麦(ゆきちから)が根付いた理由
弥彦村で本格的に小麦栽培が始まったのは2020年のこと。農業組合法人第四生産組合、農業組合法人サンファーム大戸、農業組合法人アグリさくらと弥彦村を代表する3つの法人が手を取り合い、新たな挑戦として歩みを進めました。
その背景には、「弥彦村の農地を守りながら、これからの時代に必要とされる“持続可能な農業”へと舵を切る」という大きな決断がありました。
「米づくりだけでは、農地を守りきれない。」
そんな課題感のもと弥彦村の農家が選んだのが、大豆と小麦の二毛作です。大豆は10月頃に、小麦は翌年6~7月に収穫。季節をずらしながら土地を休ませずに活用できます。農家の負担は増えるものの、国の水田活用施策による支援や二毛作に対する補助金が追い風となり、取り組みが広がっていきました。
ただ、大豆栽培には専用設備が欠かせません。
そこで立ち上がったのが、当時の「大豆機械利用組合」。のちに「弥彦村農業機械利用組合」として発展し、播種(種まき)と収穫のみを共同で行い、そのほかの管理は各法人が責任をもって行うスタイルが生まれました。
こうした工夫が、品質と効率の両立した弥彦村流の二毛作につながっていきました。第四生産組合は、大豆の乾燥・調整を行う拠点としても機能し、村全体の品質向上に貢献しています。

小麦と大豆から「伊彌彦醤油」が生まれるまで
挑戦は、作物の栽培だけでは終わりませんでした。
収穫した小麦と大豆を手に、弥彦村のメンバーが向かったのは長岡の醤油メーカー。
「弥彦の大豆と小麦で、地元ならではの6次産業化を実現できないか」
そんな一言から始まった商品開発は、まさに“ベンチャー精神”そのものです。
トライ&エラーを繰り返し、販売戦略の研修を受け、地元飲食店にも活用してもらいながら改善を重ね…。
そして令和6年10月、ついに地域ブランド商品「伊彌彦醤油」が誕生しました。
当初は「なぜ醤油なのか?」という声もあったそうです。しかし、醤油メーカーから伝えられた“ハイクラス醤油の製法”を知るほどに、その選択は確信へ。
さらに、栽培の段階で品質を高めるために導入した肥料が味や規格の安定につながり、伊彌彦醤油の品質基準を支える重要な要素になっています。一方で、資材高騰による影響もあり生産コストが150%に跳ね上がるなど課題も多く、まさに“本気の挑戦”の連続です。

醤油づくりは「売るため」ではなく「地域の未来のため」
伊彌彦醤油の目的は、単なる商品開発ではありません。
その根底にあるのは、「地域への恩返し」という思いです。
弥彦村の農地を守り、農業を続けられる仕組みをつくり、地域の資産を未来へつなぐ。
伊彌彦醤油は、弥彦の大豆と小麦、農家の挑戦、地元飲食店の協力、すべてが詰まった“地域そのもの”とも言える存在です。「中長期的に弥彦村の資産となる商品にしていきたい」作り手たちはそう語ります。
弥彦の小麦・大豆づくりは、農家の挑戦から、地域の未来をつくるプロジェクトへと成長しました。これからどんな広がりを見せていくのか、楽しみでなりません。

幅広い料理で活躍する万能「伊彌彦醤油」
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地元弥彦産100%の原料:希少な国産丸大豆の中でも、弥彦村で収穫された大豆と小麦のみを使用しています。これは、一つの自治体内で収穫された大豆と小麦だけで醸造された醤油として、新潟県内で初めての事例とされています。
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まろやかな風味と豊かな味わい: 丸大豆を原料に使用しているため、穏やかな香りと、まろやかで豊かな風味が特徴です。うま味成分が最も高い「特級」の品質に仕上がっています。
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製法::地元産の原料に麹菌を加えて3日間かけて麹を作り、塩水を加えて諸味(もろみ)を発酵・熟成させる伝統的な製法で作られています。

弥彦村といえば、旨い米と、誇りの醤油が生まれた場所と言われたい。
伊彌彦醤油は、丸大豆をたっぷり使った旨味の強い特級醤油である。普通の醤油と同じく、煮物、かけ醤油、つけ醤油など、幅広い用途で活躍する万能調味料の一つと言えます。
これらの万能調味料を常備することで、日々の料理のレパートリーが広がり、忙しい日の調理時間短縮にも繋がります。
弥彦村の観光と農業を活性化する目的で開発されたブランド醤油で、村内の原材料生産者の販路拡大にも貢献していきます。
「伊彌彦醤油 だし醤油」といった派生商品もあり、弥彦村が誇る原木栽培椎茸「やひこ太郎」の出汁を合わせたものも販売されています。