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生産者紹介

vol.3 「伊彌彦ちゃまめ」の生産者を訪ねて

■農産物:「伊彌彦ちゃまめ」
■生産者:農事組合法人 サンファーム大戸
■プロフィール:
大戸地区で、枝豆・いちご・米・麦・大豆などを栽培する農事組合法人。1993年に生産組合として創業し、2007年に法人化。地域と一緒に農業を行う「集落営農」の取り組みが評価され、2023年に全国優良経営体表彰(経営改善部門)において最高位の農林水産大臣賞を受賞した。今回は、代表理事・中川巧さん(左)、枝豆栽培担当・石川豊さん(右)にお話を伺う。

 

リレー形式で栽培していく弥彦の枝豆

弥彦村では、春に「弥彦むすめ」、夏に「伊彌彦ちゃまめ」、秋に「伊彌彦えだまめ」という3つのブランド枝豆を栽培しています。

中川巧さん(以下「中川」)「弥彦村の人は、みんな枝豆大好きだよね。うちもシーズン中は毎日食べてる。どんぶりに山盛りね!」

設立当初は米専門だったサンファーム大戸が、枝豆の栽培を始めたのは2000年のことです。

石川豊さん(以下「石川」)「初めは、ハウスで『弥彦むすめ』の栽培をしていました。種を蒔くのも収穫するのもすべて手作業だから、法人でやっていくにはあまりにも大変で、『もぎ枝豆』に切り替えました。」

枝に付いたまま出荷する「弥彦むすめ」に対して、枝からもいで出荷する「伊彌彦ちゃまめ」や「伊彌彦えだまめ」は「もぎ枝豆」と呼ばれています。

 

栽培面積を拡大するため、移植栽培から直播栽培へ

枝豆の栽培は、「移植栽培」と「直播(ちょくは)栽培」という2つの方法があります。移植栽培は、ポットに種を蒔いてある程度の大きさに育ててから畑に定植する方法。それに対して直播栽培は、畑に種を直接蒔く方法です。

中川「枝豆の栽培を始めたころに比べると、栽培面積は倍以上になってる。当初は移植だけでやってたんだけど、今は3分の2以上を直播でやっているかな。移植のほうが収量は安定するけど、広い面積をこなすには直播のほうが効率が良いんだよな。大型のトラクターで、一気に種を蒔いていくからね。」

石川「でも、栽培面では、移植よりも直播のほうが難しいんですよ。畑に種を直接蒔くので、上手く芽が出なかったり、鳥に種を食べられたり、さまざまなリスクがあります。天候を読んで、ベストなタイミングで種蒔きすることが大切ですね。常に弥彦山とにらめっこしてます。」

 

もみ殻や枝豆の残渣を使った、弥彦村のオリジナル堆肥

石川「うちでは、弥彦村のオリジナル堆肥を入れて栽培しています。地元で出た、もみ殻・枝豆の残渣・豚糞などを使った堆肥なんですよ。お客さんからは、『どうしてここの枝豆はこんなに甘いの?』と言われることが多いんですけど、この堆肥を入れているからだと思いますね。」

中川「弥彦村の枝豆農家の中でも、『伊彌彦ちゃまめ』や『伊彌彦えだまめ』のブランド力を高めるために、できるだけ弥彦村のオリジナル堆肥を使って栽培しようという動きになっているな。」

このほかにも、サンファーム大戸では美味しい枝豆を育てるために大切にしていることがあります。

石川「とにかく朝採り。朝日が出てくる頃には収穫を終えられるようにしています。収穫した後も畑に置きっぱなしにしないで、冷蔵庫に入れておくことを徹底しています。日光に当てないようにね。収穫後、日光に当てる時間が長いと枝豆の温度が上がり、エネルギーを消耗してどんどん味が落ちるんですよ。収穫してすぐに食べる場合以外は、とにかくできるだけ冷やして鮮度を保った状態で、美味しいものを届けたいと思います。」

 

毎日10時の休憩時間に開催される「今日の枝豆」

石川「枝豆は減点方式の作物なんですよね。どこまで減点されずに合格点を出せるかが勝負。種の状態が満点として、点数を減らさないための努力をしているイメージですね。」

中川「合格点が何点なのかも、やってみないとわからない。その難しさが、農業の面白さなんだよね。満足してしまうと、進歩がないから。農業って奥が深いよね。」

合格点が出たかどうか、食べてみるまでわからない枝豆。収穫時期には、スタッフみんなで枝豆の食味チェックを行うそうです。

石川「『今日の枝豆』っていう形で、毎日10時の休憩時間にみんなで試食するんですよ。実際に食べてみて、感想を言い合う時間ですね。『今日のは甘いね〜』とか。」

 

地域のみんなで、弥彦村の農業を盛り上げていきたい

法人としてはめずらしい「集落営農」に取り組んでいるサンファーム大戸。中川さんは、地域とのつながりを大切にしながら農業をしています。

中川「地域の人たちと一緒に農業をしているイメージだな。忙しい時にアルバイトとして応援に来てもらっている。農地は地域の資産だから、地域のみんなでやろうねっかってね。法人だと栽培面積が広いから、長いスケジュールを組んでやるところが多いんだけど、うちは個人の農家さんと同じように短期集中型で、一番良い時期に作業を終わらせることができる。地域の人の助けがあってこそ成り立っているんだよな。」

石川「ただのアルバイトというより、農業に参加するという意識でみんな来てくれてますね。中には、会社勤めをしているサラリーマンとか、高校生とか、普段は農業と関わりのない若者も多いんですよ。会長の人柄で集まってくるんだろっかね。」

中川「どうだろねえ。でも、若い人が多いとやっぱり良いよね。それだけで活気が出るし、弥彦村の農業全体が盛り上がる。あと、酒もいっぺ飲むし(笑)。農作業が終わったあとの飲み会が楽しみなんだよね。コミュニケーションも大切だからね。」

石川「『飲み会の練習の飲み会』とか、事あるごとに飲み会を開くんですよ(笑)。まあ、上手くまとめると、地域のみんなで農地を守っていきたいってことですね。」