Producer

生産者紹介

vol.4 「デラウェア」の生産者を訪ねて

■農産物:デラウェア
■生産者:丸山賢治さん
■プロフィール:
高校卒業後、果樹栽培が盛んな山梨県に研修に行き、ぶどうの栽培方法を学ぶ。就農後は、実家のぶどう畑でデラウェア・巨峰・ピオーネなど、さまざまな品種を栽培している。約20年以上に渡り、弥彦村ぶどう部会の部会長を務め、弥彦村全体のぶどうの品質向上にも注力。一番好きなぶどうの品種は、豊かな香りとさわやかな酸味が魅力のキャンベルアーリー。

 

丘陵地で栽培される弥彦村のデラウェア

「小粒ぶどう」や「種なしぶどう」の愛称で、親しまれているデラウェア。弥彦村は、県内有数のデラウェア産地です。

「弥彦村では、1970年にデラウェアの栽培が始められました。当時、お米の減反政策があり、お米に代わる収入源としてぶどうに着目したんです。食べてくれる方が喜ぶ姿を見るのが楽しみで、日々栽培しています。」

そんなデラウェアの栽培地は、井田丘陵と呼ばれる丘の斜面に広がっています。

「ここの畑は、もともとスギ林が広がっていた土地を切り開いて造成されたんです。周りに残っているスギの木が防風林になってくれるので、ぶどうを育てやすいんですよ。風当たりが強いと、病気になりやすかったり、枝が擦れて果実が傷付いたりしてしまいますからね。また、周りにスギの木があっても、丘の斜面に沿って植えているので日当たりも良いんです。一点、周りがスギの木に囲まれてることで、『意外と弥彦村でデラウェア栽培をしていることを知らない人が多い』という噂も耳にします(笑)。」

 

生産者の性格が現れる剪定作業

丘陵地でのデラウェア栽培はメリットが多い分、苦労も多いそうです。

「丘の上に畑があるので、水をあげるのもひと苦労なんです。ぶどうの生まれは砂漠地帯なので基本的に乾燥には強いんですが、7月頃の果実が成長する時期に水不足だと、実が大きくならないんですよね。その時期になかなか雨が降らない場合は、下から軽トラックに水を積んで持ってきています。」

このほかにも、誘引作業・摘果作業・傘かけ作業など、数多くの作業工程があるデラウェア栽培。中でも丸山さんが好きなのは、不要な枝を切って樹のバランスを整える「剪定作業」だそうです。

「剪定しているときが一番楽しいですね。小春日和に青空を見ながら作業していると、すごく気持ちが良いですよ。デラウェア栽培の土台となる大事な作業ですから、面白味もあります。」

「農家の個性が一番出る」とも言われる剪定作業。丸山さんの剪定の仕方にも、ご自身の性格が現れているそうです。

「ぶどうの畑を見ると、その生産者の性格がなんとなくわかります。私は大胆な性格なもので、この枝はもう必要ないと思ったら悩まずスパッと切っちゃいます。剪定には決断力が大事ですから!でも、『もう少し残しておけば良かった』なんて思うこともたまにありますね(笑)。」

 

味わい・香り・食感・見た目、果物は五感で楽しむもの

手間ひまかけて育てた弥彦村のデラウェアは、「甘酸っぱくて美味しい」「味が濃厚」と評判です。

「ほとんどの産地では、基準となる糖度を満たしたものを出荷します。しかし弥彦村では、糖度ではなく『糖酸比(とうさんひ)』を重視しているんです。これは糖度と酸度のバランスを見る数値です。糖酸比が23〜30のデラウェアのみを出荷しています。また、房の大きさも150g前後を目安に作っています。一般的に見ると小ぶりかもしれませんが、そのほうが味がギュッと濃縮されて美味しいデラウェアになりますね。」

さまざまな品種のぶどうを栽培している丸山さん。濃厚な甘みを引き出した大粒ぶどうよりも、甘酸っぱい味わいのデラウェアが好きなんだそうです。

「個人的に、デラウェアくらい酸味がしっかりとあるぶどうが好きですね。これは持論なんですが、甘いだけのぶどうは美味しくない。味わい・香り・食感・見た目など、果物は五感で食べるものです。だからこそ、甘みだけではなく、酸味や旨味などのさまざまな味わいを楽しめるデラウェアはイチオシです!食べ飽きしないから、枝豆みたいに永遠と食べ続けられるんですよね〜。」

 

一周遅れでまたトップを走る、昔ながらの品種

「デラウェアは、昭和の時代に流行った品種なんですよ。いっとき、大粒ぶどうブームがあり人気が落ちてしまいました。正直言うと、大粒ぶどうに比べて販売単価は安いのに、手間はかかるので、栽培をやめようか考えたこともありましたよ。ですが、根強いファンがいてくれたこともあって、弥彦村の農家は辛抱強く作り続けてきましたね。」

その甲斐あって、「昔食べていた懐かしい味わいのぶどう」として、近年じわじわと人気が高まっています。

「みんなにどんどん追い越されたけど、一周遅れでまたトップを走ってるみたいな感じかな(笑)。甘いだけでなく酸味もしっかりあるぶどうってめずらしいと思うので、若い人には新鮮な美味しさに感じてもらいたいな。」

 

デラウェアを使った、弥彦村オリジナルワイン

丸山さんも所属する弥彦村ぶどう部会では、地元の酒店が手がける「弥彦ワイン」の原料としてデラウェアを提供しています。

「弥彦ワインは、弥彦村産のぶどうを100%使用したオリジナルワインです。味は問題ないけど、製品として形が悪いものやサイズが小さいものなどの規格外品はどうしても出てきてしまいます。そうしたデラウェアをワイン用として使ってもらえるのは、生産者としてもうれしいことです。手垢がつくほど手をかけて、大切に育てていますから、少しでも多くのお客さんに届けたいですね。」

飄々としているようで、うちに秘めた情熱を持っている丸山さん。最後に、デラウェア栽培に対する思いを語ってくれました。

「自分が納得する美味しさのデラウェアは、まだ作れていないんじゃないかな。毎年かなり大変な思いをしているけど、満足のいくデラウェアができるまではやめられない。一生かけて修行しているようなものですね(笑)。」

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