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生産者紹介

vol.7 「いちご」の生産者を訪ねて

農産物:いちご
生産者:農事組合法人 サンファーム大戸

【プロフィール】
大戸地区で、枝豆・いちご・米・麦・大豆などを栽培する農事組合法人。1993年に生産組合として創業し、2007年に法人化した。今回は、いちご栽培担当・諸橋真さんにお話を伺う。諸橋さんは、高校を卒業後、同社に入社。20年以上にわたりいちご栽培を行うベテラン。

 

お姫様のように可憐なブランドいちご「越後姫」

サンファーム大戸では、2004年頃からいちごを栽培しています。品種は、1996年に誕生した新潟県のブランドいちご「越後姫」。大粒でみずみずしい果肉と、甘く芳醇な香りが特徴です。「お姫様のような可愛らしさ」から、その名が付けられました。

「私が子どもの頃に食べていたいちごは、祖母が趣味で自宅用に育てていたいちごです。ただ酸っぱいものという印象ですね。初めて越後姫を食べたときは衝撃でした。『でかくて、甘くて、美味い!なんだこれ!』って。自分で栽培したいちごをハウスで摘んで食べるのが一番美味いですね。」

そう話しながら、「お、これ美味しそう~」と真っ赤に色付いたいちごに手を伸ばす諸橋さん。

「美味しそうないちごは、まず自分で食べておきたいんですよね。いや、ただ食べたいから食べているわけじゃないですよ。お客様にお届けする前に、しっかりと味を確認しないといけないので!言い訳かもしれないですけど(笑)。」

 

ハウスの温度・湿度管理が美味しさの秘密

サンファーム大戸は、養液栽培でいちごを育てています。こちらは、水や液体肥料を与えながら、培地で栽培する方法です。

「養液栽培は、単純なようでけっこう難しいんですよ。ジューシーないちごを育てるために水は大切なんですが、与えすぎると味が薄くなってしまうんです。株に負担がかからないように、水を与えるタイミングや量を調整しています。時期や天候によっては、1週間くらい与えないときもありますね。」

さらに、ハウス内の温度や湿度も重要なポイントなのだそう。少しの差でも、いちごの美味しさに大きく影響します。

「ハウスで育てているとはいえ、昼間と夜間の寒暖差があります。雪国ですからね。この寒暖差がいちごの甘みや色付きにつながっています。ただ、昼間にハウス内の温度が上がりすぎてしまうと、ハウス外との温度差で結露してしまうんですよ。これが厄介で、湿度が高いほど病気のリスクが上がります。そのため、定期的にハウスを換気したり、二重カーテンを取り入れたり、結露しないような対策をしています。」

いちごの収穫シーズンはもちろん大忙しですが、諸橋さんの仕事はそれだけではありません。

「厳密にいうと、いちごを収穫するまでに2年もかかるんですよ。うちでは親株を仕入れて、さらに株を増やしてから収穫しています。3株を150株、150株を5000株にするんです。気が遠くなりますよね(笑)。」

 

美味しいいちごを見極めるポイントは「ハリ」と「ツヤ」

サンファーム大戸では、例年1月~5月にいちごの収穫を行っています。

「収穫するときに見るのは、いちごの色付き具合。9割以上が色付いてから収穫しています。ただ、越後姫は果肉がとてもやわらかいので、熟れすぎたものを出荷すると輸送中に傷んでしまう危険性があります。そのため、暖かくなる4月以降は8割以上で収穫して、品質を保つ工夫をしていますね。」

収穫されたいちごは、諸橋さんの厳しい最終チェックを経てお客様のもとに届きます。

「美味しいいちごのポイントは、『ハリ』と『ツヤ』。しっかりとハリがあって、ツヤツヤと輝いているいちごは、みずみずしい食感でとっても甘いです。選別をしていると、周りのスタッフから『諸橋さんの基準はかなり厳しい』って言われますね(笑)。自分が食べたいと思うものだけを出荷しています。自分が食べたいと思えないものをお客様にお届けするわけにはいきませんので!」

 

自分の育てたいちごを娘に食べてもらうのが目標

「私は高校卒業してから20年以上、ここでいちご栽培をしていますが、じつはもともといちごが好きだったわけではないんです。どちらかといえば嫌いなほうでしたね(笑)。私が就農するタイミングと、サンファーム大戸でいちご栽培を始めるタイミングが偶然合っただけなんですよ。株を育てる期間を含めると、一年中いちごの面倒を見ないといけないし、辛いことだらけです。苦労した分、収穫したときの嬉しさや楽しさはありますけどね~。」

こうボヤいている諸橋さんですが、いちご栽培への熱い想いを持っています。目指している「理想のいちご」があるそうですよ。

「いちごが嫌いな人でも『美味しい』と感じるいちごを目指しています。私に似たのか、うちの娘もいちご嫌いなんですよ。娘がいちごを食べている姿を見たことがないんですよね。それってちょっと寂しいじゃないですか。だから、自分の育てたいちごを娘に食べてもらって、『美味しい!』と言ってもらうのが今の目標ですね。それまでは辞められないです。」

 

弥彦村のいちご栽培を盛り上げていきたい

弥彦村では、サンファーム大戸のほか、「農事組合法人 アグリさくら」や「農事組合法人 麓二区生産組合」がいちご栽培に取り組んでいます。

「弥彦村は昼夜の寒暖差があり、甘くて美味しいいちごが育ちやすい地域だと思います。私たちは『越後姫』を栽培していますが、アグリさくらさんでは『ベリーポップ』という品種を育てていますよ。この間、ハウスを見せてもらいました!実際に試食しましたが、越後姫とはまた違う食感で美味しかったですね~。」

深い赤色が特徴的な「ベリーポップ」は、コクのある甘みを楽しめる品種。「越後姫」に比べて果肉が硬めのため、県外への輸送にも適しているそうです(写真左:ベリーポップ・右:越後姫)。

「弥彦村にいちごを栽培している農家がいるのはうれしいですよね。いろいろと情報交換ができますし、刺激にもなります!みんなで弥彦村のいちご栽培を盛り上げていけたら良いなと思います。」